紫外線は太陽光の一部で、地球に向かって放射されています。
太陽光には可視光線(目に見える光)、赤外線(熱として感じる光)、そして目に見えず、熱も感じない紫外線が含まれています。
太陽光はプリズムで分光され、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の7色に分かれますが、これが可視光線です。波長が短くなるにつれ、赤、橙、黄…と進み、紫外線は可視光線の紫よりも波長が短い光、電磁波となります。波長が短い太陽光線にはエックス線、ガンマ線、宇宙線も含まれますが、これらはオゾン層によって遮断され、地球には届きません。
電磁波は波長が短いほどエネルギーが大きく、物質に化学変化をもたらす性質があります。たとえば、日の光を浴びたペットボトルが劣化していくのは、紫外線がプラスチックに化学変化を引き起こしているためです。同様に、紫外線などの波長の短い電磁波は、体内の酸素分子や水分子に影響を与え、化学変化を引き起こして人体に悪影響を及ぼす可能性があります。
紫外線は肌にシミやシワを引き起こすだけでなく、高頻度での暴露は皮膚がんを引き起こす可能性もあります。そのため、紫外線には慎重に対処する必要があります。
紫外線と肌の関係
真皮内に存在するコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸は、スポンジのような役割を果たしています。これらの成分もUVAによって損傷を受けると、表面にかかる圧力に対処できなくなり、それが原因で肌にシワやたるみが生じます。UVAによる損傷は真皮内の線維芽細胞にも影響を与え、コラーゲンなどの損傷を修復する能力が低下し、シワやたるみが一層進行します。この現象を一般的に「光老化」と呼んでいます。
さらに、UVAによる光老化はシミの形成も引き起こします。UVAに曝された色素細胞が異常を起こし、メラニン色素の過剰な生成が始まります。また、表皮の底に位置する表皮細胞もUVAの損傷を受け、通常のような分裂や増殖ができなくなります。これにより、表皮の細胞更新サイクルが遅れ、色素沈着が進むことがあります。
過剰に生成されたメラニン色素は表皮から真皮に漏れ出し、本来であれば「マクロファージ」によって排出されるべきものが、UVAによる真皮の損傷により留まり、色素沈着を引き起こします。
光老化は免疫力の低下を伴い、感染症やDNAの損傷による皮膚がんのリスクが高まります。実際、長時間の強い紫外線への曝露がシワやシミを引き起こした後、皮膚がんに進行するケースが報告されています。
かつては日光浴が「健康」の象徴であった時代がありましたが、近年では光老化や皮膚がんのリスクが認識され、日光浴へのアプローチが変わりました。ビタミンDの合成に関する過去の認識も、現代の日本ではほとんど発症していないくる病として見直されています。
紫外線は肌の老化を進める
紫外線は細胞のDNAやコラーゲンなどに直接損傷を与え、肌内の水分や酸素を刺激して「活性酸素」を生成します。実は肌の光老化は、紫外線の損傷よりも活性酸素のダメージが大きいと考えられています。
活性酸素は表皮の炎症や日焼けを引き起こし、新陳代謝を乱し、色素細胞や真皮線維芽細胞に異常を起こし、コラーゲンを損傷します。紫外線と活性酸素のダメージが合わさり、肌に大きな被害をもたらします。傷ついた細胞は補修に取り組み、エネルギー生産のミトコンドリアからも活性酸素が発生します。
細胞と細胞外マトリックスが弱まり、糖化が進み、老廃物がたまります。血管やリンパ管も紫外線によりダメージを受け、栄養供給や老廃物の回収が阻害され、免疫機能が低下します。免疫機能の低下は老化を促進し、紫外線の長時間曝露は感染症や皮膚がんのリスクを高めます。
紫外線を浴びたら
紫外線の影響を受けた場合、重度の日焼けである「日光皮膚炎」では皮膚科医の指導で非ステロイド性消炎鎮痛薬や副腎皮質ステロイド薬が必要です。通常の日焼けには、βカロテン(ビタミンA)、ビタミンC、ビタミンEなどの抗酸化物質が有効です。
βカロテンは体内でビタミンAに変わり、活性酸素による酸化から細胞膜やDNAを保護します。緑黄色野菜が良い摂取源です。
ビタミンCは紫外線対策やメラニン生成の抑制に役立ち、肌のコラーゲンとエラスチンの生成を促進します。抗酸化作用もあり、ピーマンやレモン、イチゴなどに多く含まれます。
ビタミンEは脂溶性で、不飽和脂肪酸を含む細胞膜や核膜に溶け込み、細胞を酸化から保護します。ナッツやひまわり油に多く含まれていますが、魚卵は塩分が高いため注意が必要です。これらの栄養素を摂りながら、十分な水分補給や保湿も重要です。